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2011年05月 アーカイブ

安売りしない女

なにしろお客は、莫大なお金をかけても廓に通おうという粋人(おいらんを買うには年に三千万円くらいは必要)、ほくろ 除去して身に付けるハンパな「お嬢さん芸」なんか、とてもじゃないが恥ずかしくって見せられない。

だからおいらんは、和歌でも書道でも踊りでも、すべて家元級にこなせたんです。

だって、どんな趣味を持つお客がつくかわからないんだもの、「碁でもうとうか」と言われるかもしれないし、「近ごろの能狂言は」という話になるかもしれない。

それをすべて心得てたんですよ、おいらんは。

だけど、そんじょそこらの客には体どころか芸も見せなかったし、たとえ大金持ちの旦那でも、ヤボなヤツは相手にしなかった。

よほどのことがないかぎり、どんなに名手でも踊ったり唄ったりもしない。

お座敷芸が目あての客は、芸者かたいこ持ちを買えばいいのだから。

お客のほうも、おいらんをくどくために芸事に励んだ。

高いお金をかけて、むしろお客がおいらんのゴキゲンをとってたんです。

命がけの駆け引き

もし「○○屋の旦那は、○○太夫にふられた」なんて噂がたったら経済力は疑われるし、ヤボのレッテルを貼られるんだから、お客も真剣。

おとなのオトコとオンナの優雅なかけひきは、実は命がけだったんです。

たとえば、芸者、かむろ、女中衆がズラリと居ならぶ席で、お客があやうく恥をかきそうになったら……。

「このあいだ奈良に行って、はじめて鹿の鳴き声を聞いたよ」と旦那がおっしゃる。

ところが鹿が鳴くなんて話は遊廓の女は誰もしらない。

ひょっとして旦那は何かほかの動物の声を聞き違えたんじゃないかしらと座が気まずくなっちゃった。

そこでおいらんは機転をきかせ、百人一首の中には「おくやまにもみち踏み分け鳴く鹿の声聞くときぞ秋はかなしき」という歌があるから、と女中たちに教えてやる。

「あなたたちは、百人一首も知らなかったの?」―と。

おいらんだって鹿が鳴くかどうかはわからないけど、ほくろ レーザー 治療たけじゃなくて、ちょっとした「教養」があれば、お客に恥をかかせずにすむわけ。

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